子どもが浪人すると、本人だけでなく保護者も不安になります。
「ちゃんと勉強しているのか」
「この成績で本当に大丈夫なのか」
「今の塾のままでいいのか」
「もっと現実的な大学を考えた方がいいのではないか」
心配になるのは当然です。
ただ、その不安をそのまま本人へ向けると、かえって受験生活を不安定にしてしまうことがあります。
浪人生の保護者にまず伝えたいのは、
受験するのも、進学した先で生きていくのも本人だということ。
最終的な進路は、できる限り本人に決めてもらうべきだと考えています。
そのうえで親ができるのは、本人の代わりに受験を管理することではありません。
必要な条件をあらかじめ伝え、本人が受験に向き合える環境を整えることです。
この記事では、浪人生の親がどこまで関わり、何を本人に任せるべきなのかを、指導現場で感じてきたことをもとに整理します。
基本は「本人の人生だから、本人に決めてもらう」
志望校も、学部も、将来の進路も、基本的には本人のものです。
親がすべて決めるのではなく、
本人が自分で考え、自分で選ぶ。
これを基本にしてほしいと思います。
もちろん、家庭には現実的な条件があります。
たとえば、
- 私立大学へ進学するだけの学費は出せない
- 一人暮らしは難しい
- もう一年の浪人は認められない
- 通学できる範囲に限りがある
といったことです。
こうした条件は、むしろ最初にきちんと伝えておくべきです。
一番避けてほしいのは、後出しです。
本人がある大学を目標に何か月も頑張ったあとで、
「実はそこには通わせられない」
と言われれば、それまでの努力だけでなく、親への信頼まで大きく損ないます。
家庭として譲れない条件は先に共有する。
その範囲の中で、本人ができる限り自分の希望を実現する。
この順番が大切です。
まだ浪人するか進学するかを家族で決める段階なら、浪人するか進学するか迷ったときの判断基準で、費用や家庭の条件も含めて整理しています。
家は「受験について言われる場所」にしない
浪人生にとって、家はできるだけ休める場所として残してほしいと思います。
塾や自習室で長時間勉強し、成績や合否への不安を抱え、周囲の友人が大学生活を始めている中でもう一年受験に向き合う。
それだけでも、かなりの負荷があります。
その状態で家へ帰り、
「今日は何時間やったの?」
「模試どうだった?」
「ちゃんと間に合うの?」
と毎日のように言われれば、気が休まる場所がなくなります。
そうなると、スマートフォンや遊びなど、受験から離れられるものへ逃げたくなることもあります。
だから、特にリビングや食卓、お風呂などは、
受験のことを少し忘れられる場所
として残してあげてください。
もちろん、自宅を中心に勉強している浪人生もいます。
その場合でも、食事や入浴など、1日のどこかには受験の話題から離れられる時間を作っておくと、本人も気持ちを切り替えやすくなります。
家の中で勉強することと、家の中すべてを受験の場にすることは別です。
模試や成績への反応は最小限でいい
保護者の関わり方でよく見るのが、模試の判定への反応です。
A判定なら安心する。
D判定やE判定なら不安になり、
「本当にこの大学で大丈夫なの?」
「志望校を下げた方がいいんじゃない?」
と言ってしまう。
ただ、本人は悪い結果が返ってくれば、本人なりに十分気にしています。
そこへ親まで大きく反応すると、不安を増やすだけになることがあります。
本人が模試を見せてきたのであれば、
「頑張ってるんだね。これからも応援してるよ」
くらいでも十分です。
逆に、本人が見せてこない模試について、毎回親から「どうだった?」と聞きに行く必要もないと思います。
たとえ判定が悪くても、親まで慌てて志望校変更の話を始める必要はありません。
細かい分析は、本人と指導者でやればいい。
模試の判定そのものではなく、成績が伸びていない原因をどう整理するかについては、浪人生の成績が上がらない原因と見直し方で詳しく整理しています。
同じことは、ネットで集めた情報や保護者自身の受験経験にも言えます。
「この大学がいいらしい」
「この塾が評判らしい」
「この参考書をやった方がいいらしい」
と次々本人へ持ち込む必要はありません。
受験情報は、本人の学力・志望校・科目・現在の学習状況によって意味が変わります。
また、保護者自身が受験した頃とは、入試制度や方式も変わっています。
親まで受験指導者になる必要はありません。
気になる情報があれば、本人へ強く勧める前に、予備校や塾などの指導者へ確認するくらいがちょうどいいと思います。
成績が上がっていないときも同じです。
本人も、成績が伸びていないことは分かっています。
「なんで上がらないの?」
「もっと勉強した方がいいんじゃない?」
と追い詰めるより、
「頑張ってるね」
「応援してるよ」
「困ったら先生に相談するんだよ」
くらいで十分です。
もし本人が悩んでいる様子なら、すぐ解決策を出すのではなく、まず話を聞いてあげてください。
「そうなんだ」
「それはしんどいね」
と聞くだけでいいこともあります。
本人が指導者にも相談できていないことを抱えているようなら、必要に応じて保護者から状況を共有するのも一つの方法です。
親が全部解決する必要はありません。
「サボっているように見える」ときは、まず事実を確認する
ここまで「本人に任せる」と書いてきましたが、本当に勉強していない場合まで黙っていればいいとは思いません。
家庭から学費や予備校代などの支援を受けて浪人しているのであれば、本人にも、その支援に対して真剣に取り組む責任はあると思います。
ただし、
親から見て勉強していないように見えることと、本当に勉強していないことは別です。
塾では朝から晩まで勉強していて、家では休んでいるだけかもしれません。
本人なりに限界まで頑張っている可能性もあります。
だから、家でスマートフォンを触っている一場面だけを見て、
「全然勉強していない」
と決めつけないこと。
言いたいことを一度飲み込み、必要なら塾や予備校へ、
「最近、塾ではどんな様子でしょうか」
と確認してみてください。
そこで本当に学習量が不足しているのであれば、その時点で本人・家庭・指導者で今後について話せばいい。
事実を確認してから話す。
これだけでも、不要な衝突はかなり減らせます。
親子で志望校が違うときも、最初に決めた条件を基準にする
親は国公立へ行ってほしい。
本人は私立大学へ行きたい。
親は地元へ残ってほしい。
本人は一人暮らしをしたい。
こうした意見の違いは珍しくありません。
この場合も、最初に共有した家庭の条件を基準に考えます。
たとえば、
「私立大学でも大丈夫。ただし一人暮らしは難しい」
という条件を最初に共有しているのであれば、その範囲の中で本人が行きたい大学を考える。
反対に、
「国公立でなければ学費を出せない」
という家庭であれば、それも最初から本人が知っている必要があります。
何でも思い通りになるわけではありません。
限られた条件の中で、できる限り自分の希望を実現することも進路選択の一部です。
大切なのは、受験途中で条件を増やしたり変えたりしないことです。
家庭の条件を確認したうえで、本人がどこまで高い志望校を目指すか迷っている場合は、浪人生が志望校を上げるときの判断基準も参考にしてみてください。
親が不安になったら、本人にぶつける前に相談する
保護者も当然不安になります。
「本当に勉強できているのか」
「このままの志望校でいいのか」
「最近元気がないけれど大丈夫なのか」
ただ、その不安をすべて本人に向けると、
「大丈夫なの?」
「ちゃんとやってる?」
「先生は何て言ってるの?」
と、家でも受験の確認作業が始まってしまいます。
本人はすでに、
「受からなかったらどうしよう」
という不安を抱えています。
そこへ親の不安までそのまま加える必要はありません。
受験について気になることがあるなら、
本人へぶつける前に、信頼できる塾・予備校・指導者へ相談する。
それでいいと思います。
もし不安の中心が「今の予備校・塾が本人に合っていないのではないか」という点にあるなら、予備校・塾が合わないと感じたときの判断基準で、辞める・変える前に確認したいことを整理しています。
本人と指導者に学習面は任せる。
保護者は、
「必要な支援はする」
「生活面は支える」
「何か困ったら言ってね」
という位置にいる。
指導していても、この距離感を保てる家庭は比較的うまく回りやすいと感じます。
保護者自身も、不安を一人で抱え込みすぎる必要はありません。
指導者など、本人以外に相談できる相手を持っておくことは、結果的に家庭を穏やかに保つことにもつながります。
そして本人について心配するなら、勉強時間だけでなく、
「ちゃんと食べているか」
「眠れているか」
「体調は悪くないか」
といった生活面を気にしてあげてください。
それだけでも、本人には十分伝わります。
家庭内で衝突するときほど、親自身の不安を振り返る
浪人生と保護者がぶつかることは珍しくありません。
指導現場で感じるのは、
保護者自身の受験や学歴に対する思いが、子どもの受験へ強く投影されているケース
です。
「自分は進学で苦労したから、子どもには苦労させたくない」
「自分が行けなかった大学へ行ってほしい」
という気持ちは、親として自然な部分もあると思います。
ただ、それが強くなりすぎると、
本人の希望ではなく、
親自身が納得できる進路
を求めてしまうことがあります。
子どもの受験について何か言いたくなったときには、
「これは本人のために言っているのか」
「それとも、自分自身の不安や後悔を解消するために言っているのか」
を一度考えてみてください。
それだけで、本人へかける言葉が変わることもあります。
まとめ|親は受験を管理する人ではなく、安心して帰れる場所を作る人
浪人生の親にお願いしたいのは、
本人の受験を、本人に返してあげること
です。
もちろん、これは本人が何をしても許されるという意味ではありません。
家庭から支援を受けて浪人する以上、本人にも、その環境に甘えず真剣に受験へ取り組む責任があります。
その前提のうえで、親にできるのは、
家庭としての条件を最初に伝える。
生活面を支える。
体調を気にする。
話したそうなら話を聞く。
そして、
「頑張ってるね」
「応援してるよ」
「何かあったらいつでも言ってね」
という姿勢を示すことだと思います。
受験について不安になったら、その不安を本人へぶつける前に、信頼できる指導者へ相談してください。
私は、塾や予備校には、本人へ勉強を教えるだけでなく、保護者の不安を受け止め、家庭が安定した状態で受験生活を支えられるようにする役割もあると考えています。
親が少し安心できれば、本人にも余計な不安をぶつけずに済みます。
そして、家を安心して帰ってこられる場所として残しておく。
それも、保護者ができる大きな受験サポートの一つです。
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